純正律と平均律という言葉は聞いたことがあるけれども、いったい何だろう…という方も多いかと思います。
今回は純正律と平均律がどういったものなのかを紹介したいと思います。
純正律って何?
まず純正律を紹介していきます。
純正律というのは、音同士の周波数の比が単純な整数比になるように音を規定していきます。
なんじゃそりゃ?
と思うかもしれませんがちょっとイメージしてみてください。
Aの音を440Hzに合わせたとしましょう。
そしてその440に対して単純な整数比を考えてみます。
最も単純なのは1:1ですね。
440Hz:440Hzということになります。
この二つの音を同時にならすと、当然同じ音なので調和します。
次に1:2だとどうでしょうか。
440Hz:880Hzです。
この二つを同時にならすと、オクターブ違いの同じA音で調和します。
こう考えると単純な整数比の音が調和するイメージが掴めると思います。
さて話は戻りまして、純正律の周波数が単純な比になっているとのことですが、実際どん比になっているのかをCを基準の音として表にしてみました。
C | D | E | F | G | A | B | C | |
基準音C | 1:1 | 8:9 | 4:5 | 3:4 | 2:3 | 3:5 | 8:15 | 1:2 |
何故このような比に行き着いたのかですが、むか~しむかしの人々が「ユニゾンやオクターブ以外だと4:5や2:3だと音が濁らないぞ!!」と気が付いたところから始まります。
そしてその4:5や2:3を駆使して綺麗に響く音を定めていったのです。
現代の音名でいうと、基準になるCの音の2:3の比の音をGと定めて、次にGの音の周波数を基準に2:3の比の音をDと定めて、Cの音の3:2の比の音をFと定めて、Cの4:5をE、Gの4:5がB、Fの4:5がAといった感じになり、それを順番に並べたのが純正律というわけです。
上の表を見ると、CとEとGの音を同時にならした場合、周波数の比が4:5:6になることがわかると思います。
所謂Cメジャーのコードですね。
これが非常に綺麗に響くのです。
まるで完璧な音律ですね。
これ以外に音律は必要無いのでは?と思えるのですが、現代の音楽ではなぜか純正律が全くといっていいほど使われていないのです….
では何が使われているのでしょうか……
そう!! 平均律です!!
いったい純正律のどこに問題があったのでしょうか!?
答えは簡単。
基準となる音が中心の曲しか演奏できないからです。
Cの音を基準に他の音を決めていき、Cの音を基準とした曲を演奏している場合は問題ないのですが、現代のように様々な楽器が同時に演奏し、曲ごとにキーも違い、1曲の中でも転調したりする場合、綺麗に響くはずの純正律が仇となって、逆に濁った音になってしまうのです。
そこでその問題を解決するために生まれたのが平均律というわけです。
平均律って何?
純正律の問題点は先程説明しましたが、それを解消する為に生まれた平均律はどういったものなのでしょうか。
ものすごく簡単に言うと1オクターブを均等に12分割したものです。
この12等分がどうなっているのかというと、隣り合った音(CとC#やEとFといった音)の周波数の比が全て同じになっています。
隣り合った音同士の周波数の比は1:1.059…となります。
Cの音に1.059を掛けたものがC#。C#に1.059を掛けたものがDといった具合です。
人間の耳は音と音の周波数の比が同じであれば、同じようなインターバルに聴こえるようにできています。
100Hzの2:3の比である150Hzでは完全5度の音程差に聴こえ、200Hzの2:3の比である300Hzではやはり完全5度の音程差に聴こえます。
よってこうしてできた平均律は、純正律と比べると多少の音の濁りはありますが、どのキーであっても、どんな音階であっても、音同士のインターバルは保たれ、転調や様々な曲を違和感なく演奏することができるようになりました。
そして現代の音楽の様に様々な楽器が同時に演奏する様な場合は、その多少の音の濁りも更に気にならなく感じられます。
余談
平均律は1オクターブを12分割と説明しましたが、それはあくまで現代で一般的に使われている音律であり、世界中に12分割以外の平均律が存在しています。
代表的なものだとインドネシアのガムランの5分割や、中東のように微分音を用いて更に細かく分割する音律もあります。
まとめ
現代ではほぼ全ての音楽が平均律で作られています。
“音の綺麗な響きを損なうのを最小限に抑えながらも利便性を高めたい”という思いから生まれた平均律を大切にしながらも、更に新しい響きを求めて音律を研究していくのも面白いかもしれませんね。
コメント